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雷発生と雷害のメカニズム

雷の概要 <木島 均”接地と雷防護”、P13-18、電子情報通信学会より抜粋>

雷の発生メカニズム

雷には,発生メカニズムでみると熱雷と界雷が,また落雷の形態でみると,直撃雷と誘導雷がある。

熱雷
図1.1 熱雷の発生メカニズム

熱雷は,夏に積乱雲(入道雲)の上昇気流によって生じる帯電なので,夏雷とも呼ばれている。

熱雷のモデルを図1.1に示す。強い日射により地表付近の湿った空気が暖められ,上昇気流によって積乱雲が発生する。積乱雲の中では,高温多湿の水蒸気が断熱膨張し,氷粒(あられ,ひょう)と氷晶が形成される。これらの粒子の温度差に起因する電荷分離が起こり,温度の高い氷粒(あられ,ひょう)は負に,温度の低い氷晶は正に帯電する。これらの粒子が上昇気流と重力によって分離され,雷雲の上部は正電荷下部は負電荷の分布となる。

熱雷は,雷雲下部が地上高2~3kmの比較的高い位置に発生する。

界雷

界雷は,温暖な気団と寒冷な気団の境界において,激しい上昇気流が形成されることによって発生する(図1.2)。

界雷には,寒冷前線雷と温暖前線雷がある.どちらも湿気を含んだ温暖な気団が押し上げられるために,上昇気流によって雷が発生する.界雷は地上高数百mの比較的低い位置に発生し,前線の移動に伴って広い地域に影響を及ぼす。

図1.2 界雷の発生メカニズム
雷撃の種類
直撃雷

雷雲下部の負電荷に誘起されて,地表面上に,正電荷が蓄積される。 この地表面の正電荷と雷雲下部の負電荷によって強い電界が生じる。通常地表面上の電界は晴天時1OOV/m程度であるが,直撃雷が発生するときには50kV/m程度になっている。この強い電界によって,大気が絶縁破壊すると直撃雷となる(図1.3(a)).

この絶縁破壊は,負電荷が地上へ落ちてくる方向なので,負極性の雷と呼ばれている.負極性の雷は全体の90%であり,残りの10%は正極性である。

正極性の雷は,冬季の北陸などにおいて,寒冷前線によって発生した界雷が低い地上高のときに,雷雲上部の正電荷と地表面の負電荷問で直接放電するものである(図1.3(b)).

図1.3(a) 直撃雷-負極性(90%)  図1.3(b) 直撃雷-正極性(10%)
誘導雷

誘導雷には,次の2種類がある。

(1) 構造物などへの直撃雷によるもの
建物,木などへの直撃雷電流によって付近に強い電磁界が生じ,電磁誘導によって近くの通信線,電力線に電圧が発生する(図1.4(a))。

(2) 雷雲間での放電によるもの
二つの雷雲問で,正電荷と負電荷が放電すると,通信線,電力線上に拘束されていた電荷が緩和され両方向に移動する.この電荷の移動が進行波(サージ;surge)となって,ケーブルに電圧が発生する(図1.4(b))。

図1.4(a) 誘導雷-木立への直撃による誘導雷  図1.4(b) 誘導雷-雷雲間の放電による誘導雷
年間雷雨日数

図1.5に気象庁発表の年間雷雨日数(10年)平均を示す。

図1.5 年間雷雨日数(拡大表示可能)

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