1. パソコン通信と雷対策
最近の雷被害
通信システムの雷害として、最近増加しているのがパソコン通信で使用するDSUやTAおよびパソコン自体の故障である。また、事務所や工場などのLANにおいても雷の被害の発生が目立つようになっている。
従来の単独電話では、通信線の端末に機器が接続されており、雷が通信線から侵入しても機器から電流が流れ出す経路がなく、故障の発生もビルや通信線に直接雷が落雷する場合(直撃雷)に限られていた。
しかし、パソコン通信やLANを構成する通信機器はすべて商用電源に接続されており、通信線から入った雷サ−ジが機器を通過して電源線に流れ出したり、電源線からの雷サ−ジが通信線や系統の異なる電源系に流れ出し、雷サ−ジの通路にあたる通信機器やパソコンなどが故障する事例が増加している。
これらの故障は、直撃雷だけでなく誘導雷によって発生していることが多い。誘導雷は、500m離れた所に落雷があった場合でも、10KV程度の電圧が誘導されて各家庭や事務所の端末に伝搬していく。
図1.1は関東地方で、ある日に発生した落雷について、落雷点の分布と落雷点を中心に半径500mの円を書いたものである。これで示すように近くに雷が落ちなくても、誘導雷の電圧が10KVを越える場所がかなりの割合で存在することがわかる。
| 図1.1 電撃点の分布 |
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また、雷サ−ジは通信線だけでなく電源線から侵入して、故障が発生する例も増えている。
図1.2は高圧配電線に直撃雷があった場合の雷サ−ジの伝搬経路の例を示している。高圧配電線の避雷器が柱上トランスと同一の電柱に取り付けられている場合があり、高圧配電線に落雷があると雷サ−ジが避雷器接地に流れ、近くのB種接地から柱上トランスへ逆流する。さらに、これが100Vの電源線を通って宅内に伝搬し、商用電源を使用する機器を破壊する事例が増えている。
図1.3はISDN機器で電源から雷サ−ジが侵入した場合の例である。このように、電源線の雷サ−ジはDSU付タ−ミナルアダプタ(TA)の電源から入って、内部回路を通り通信線に流出する。また、逆に通信線から雷サ−ジが入った時も通信線から電源線に電流が流れて機器を故障させる。
| 図1.2 電源線からの雷サージ |
図1.3 ISDN機器の故障例 |
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外付け雷防護回路の比較
雷サ−ジは例え1000Vでも1mmの空間の絶縁を破壊して容易に機器を故障させてしまうため、絶縁によって機器への侵入を防ぐことは難しい。したがって、対策方法としては電源線から通信線に電流をバイパスする方法が効果的である。
通信機器を防護するための防護回路として、いくつかのタイプのものがあるが、雷の伝搬経路に対する効果の比較を以下に説明する。
| 図1.4 雷防護回路の比較 |
<タイプ1>
電源線の線間に避雷器を取り付ける |
<タイプ2>
電源線の各線との接地の間に避雷器を取り付ける |
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<タイプ3>
電源線と通信線の間をバイパスする
(3極ガス入り避雷管を使用する) |
<タイプ4>
電源線と通信線の間をバイパスする
(PNPN半導体避雷素子を使用する) |
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図1.4のタイプ1は、電源線の線間にバリスタなどの避雷素子を取り付ける方法で、電源の端子間に発生する電圧を低減する。しかし、電源線から入った雷サ−ジは電源端子間よりも、電源端子と大地との間に大きな電圧が発生しており、この電圧によって通信機器の絶縁を破壊して通信線に電流が流出するため、故障を防止できないことがある。
タイプ2は、電源線に入った雷サ−ジをバリスタなどの避雷器から接地に流出させる方法である。この場合、電源線の雷サ−ジ電圧が高くなると大地に電流が流れる。しかし、一般家庭の保安用接地には100オ−ム程度の接地抵抗があるため、電源線と大地間の電圧を十分低下させることができない。
タイプ3は、電源線からの雷サ−ジをバリスタで大地に逃がすとともに、通信線にも3極ガス入り避雷管でバイパスさせ、通信機器に雷サ−ジが侵入しないようにするものである。アナログ端末では通信線からの雷サ−ジに対する耐力が比較的大きいため、この方法で機器を防護できる。しかし、ISDN機器では通信線からの雷サ−ジに対する耐力が低く故障が発生することがある。
タイプ4は、動作速度が速くて電流耐量が大きいPNPN半導体避雷素子を開発して、通信線側に使用したものであり、ISDN機器の防護にはこのタイプのものを推奨する。
ガス入り避雷管では図1.5のように動作遅れがあるため、雷サ−ジが入った時に、通信装置を守るため制限電圧設定値よりも大きな電圧まで動作せず、通信機器に大きな電圧が侵入することとなる。これに対してPNPN半導体避雷素子は動作時間遅れが雷の電圧上昇に対して無視できるほど小さいため、大きな雷サ−ジが入っても通信装置を守るための制限電圧設定値を超えることがなく、機器を良好に保護することが出来る。
| 図1.5 PNPN半導体避雷素子の動作特性 |
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<参考>各種避雷素子の特性(木島 均”接地と雷防護”、P21、電子情報通信学会から抜粋)
| 避雷素子の特性 |
| タイプ |
応答時間(μs) |
動作電圧(V) |
サージ電流耐量(A) |
静電容量(pF) |
| PNPN半導体避雷素子 |
0.001〜0.01 |
10〜1,000 |
100〜3,000 |
100〜1,000 |
| ガス入り避雷管 |
0.1〜1 |
100〜1,000 |
100〜100,000 |
〜1 |
ISDN機器の雷対策
図1.6は、メタリックのISDN回線に接続したタ−ミナルアダプタやパソコンなどを保護する場合の、ISDN用雷防護アダプタの具体的な取り付け方を示す。PNPN避雷素子を使用した雷防護アダプタを使用し、これを介して局線をDSU付タ−ミナルアダプタ(TA)に接続する。また、雷防護アダプタの電源プラグをTAなどと同一の電源コンセントに差し込むとともに、パソコン、TAに接地端子がある場合には、雷防護アダプタの接地端子を接地線で接続する(パソコン、TAに接地端子がある場合には感電防止のため保安用接地に接続することが必要)。
図6の矢印は電源線から雷サージが進入した場合の電流経路を示す。このように、電源線と通信線の間の電圧で機器が破損する前に、雷防護アダプタが高速で動作し、雷サージが雷防護アダプタを経由して通信線にバイパスされ、パソコンやTAが故障するのを防止する。
また、通信線から雷サージが侵入した時は、矢印と逆の方向に電流がバイパスされて、電源からの雷サージと同様に機器を防護する。
| 図1.6 ISDN用雷防護アダプタの取り付け |
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2.PNPN半導体避雷素子の導入効果
弊社のISDN用「雷ガード」は、NTTが開発したPNPN半導体避雷素子を採用しており、従来製品(ガス入り避雷管又はアレスタ)と比較し、半導体で構成された製品(DSU、ターミナルアダプタなど)の雷防護に適した設計になっている。
SDN用「雷ガード」の雷対策効果を評価した事例として、PNPN半導体避雷素子採用の「雷ガード」を搭載した類似製品の東北地方日本海側地域での導入実験結果データを表2.1に示す。
| 表2.1 雷対策地域の雷被害発生件数の推移 |
| 導入地域 |
平成9年度 |
平成10年度 |
平成11年度 |
| A地区 |
64 |
145 |
1 |
| B地区 |
23 |
186 |
6 |
| C地区 |
24 |
6 |
0 |
| 合 計 |
111 |
337 |
7 |
| 記 事 |
- |
導入前 |
導入後 |